データ共有の重要性とその背景
営業、マーケティング、CSの各部門が独自に活動するだけでは、顧客に対する一貫した対応が難しくなります。例えば、営業が獲得した顧客情報をマーケティングが活用できなければ、効果的なキャンペーンの実施が困難になります。また、CSが顧客の過去の購入履歴や問い合わせ履歴を把握していなければ、適切なサポートを提供することができません。さらに、情報が部門ごとに分断されている状態では、アップセルやクロスセルの機会を逃してしまったり、同じ顧客に対して重複したアプローチが行われるなど非効率が生じやすくなります。営業活動の履歴や顧客のフィードバックがリアルタイムに全社で共有されなければ、顧客の期待やニーズを的確に捉えたコミュニケーションの実現は困難です。
このような課題を解決するためには、部門間でのデータ共有が不可欠です。データを共有することで、顧客に対する対応の質が向上し、顧客満足度の向上や売上の増加につながります。特に、各部門が保有するタイムリーかつ正確な情報を統合して活用することで、組織全体としての意思決定スピードやサービス品質を高めることができます。結果として、すべての部門が連携しながら顧客ごとに最適な対応策を迅速に講じられる体制を構築できるため、企業全体の成長と競争力強化にもつながります。
営業部門が共有すべきデータ項目
営業部門が他部門と共有すべき主なデータ項目には、以下のようなものがあります。
- 顧客情報
会社名、担当者名、連絡先、業種、規模などの基本的な属性情報はもちろん、担当者の意思決定権限や役職、過去のやり取り履歴など、営業活動に関わる詳細なプロフィールも含まれます。
- 商談履歴
過去の商談内容や提案資料、送付した見積書、受注・失注に至った背景や主要な意思決定プロセス、競合状況、お客様が重視していたポイントといった情報も蓄積・共有が重要です。これにより、同じ案件への重複アプローチやコミュニケーションロスを防ぐことができます。
- 契約情報
契約開始日、契約終了日、契約金額、契約更新や解約に関する条件などの詳細情報に加え、契約プランやオプションの選択状況、各種添付契約書の管理状況も共有範囲に含まれます。
- 顧客のニーズや課題
顧客が抱えている具体的な課題やニーズ、導入の目的、事業上の背景や優先順位、長期的な目標・KPIなど、営業活動を通じてヒアリングした定性的・定量的な情報を可視化し、他部門に共有することで、組織全体で顧客理解を深めることができます。
これらの情報をリアルタイムかつ正確に共有することで、マーケティング部門は顧客ニーズに合致したターゲティングや効果的なキャンペーン企画が可能となり、カスタマーサクセス(CS)部門は課題やニーズを先回りした適切なサポート・提案が実現します。また、情報連携が強化されることでアップセルやクロスセルの有効なタイミングを逃さず、顧客体験の最適化とLTV最大化に寄与します。
マーケティング部門が共有すべきデータ項目
マーケティング部門が他部門と共有すべき主なデータ項目には、以下のようなものがあります。
- リード情報
獲得したリードの会社名・氏名・連絡先や、リードがどのようなチャネル・キャンペーンを通じて流入したか、関心を示したサービスや資料など、属性や興味関心の履歴まで含めて蓄積・共有することが重要です。
- キャンペーン履歴
実施したマーケティングキャンペーンやプロモーションの名称、実施期間、対象となったリード・顧客の属性、反応率やコンバージョン数、各種施策ごとの成果指標などを包括的に管理します。これにより、どの施策が有効だったか全社的に分析が可能となり、次回以降の活動改善にもつながります。
- ウェブサイトの行動履歴
顧客やリードがウェブサイト上で閲覧したページ、ダウンロードした資料、フォーム送信やウェビナー登録の履歴、滞在時間や離脱ポイントなどの詳細な行動データを取得・共有します。これにより、興味・関心の度合いや検討段階を正確に把握できるため、各部門がよりパーソナライズされた提案やサポートにつなげることができます。
- マーケティングオートメーションのスコア
リードスコアリングの結果やナーチャリングシナリオごとの進捗状況、メールの開封・クリック・レスポンス履歴など、MAツールから得られる詳細スコアやオーディエンスセグメントの共有が求められます。
こうした情報を営業・CS部門とリアルタイムかつ体系的に共有することで、営業部門はリード固有の課題や興味に合わせた提案・アプローチが可能となり、CS部門も顧客の過去の行動や関心領域を踏まえたサポートを提供できます。結果として、部門間での連携強化と顧客体験の最大化が実現します。
カスタマーサクセス部門が共有すべきデータ項目
カスタマーサクセス部門が他部門と共有すべき主なデータ項目には、以下のようなものがあります。
- サポート履歴
過去の問い合わせ内容、対応履歴、対応に要した時間や解決までのプロセス、不具合・要望の傾向など、顧客ごとのサポート対応の詳細な記録。
- 顧客満足度
NPS(ネット・プロモーター・スコア)、CSAT(顧客満足度スコア)、カスタマーアンケート結果など、顧客体験の定量的・定性的な評価指標。
- 利用状況
製品・サービスの利用頻度、アクティブユーザー数、利用機能の範囲や新機能の活用状況、ログイン・操作履歴、休眠傾向など。
- アップセル・クロスセルの機会
顧客の現在の利用サービスやプラン、過去のニーズ・要望、問い合わせ履歴・利用状況に基づく提案余地や発展可能性、今後の課題や興味を持っている機能領域など。
これらの情報をタイムリーかつ部門横断的に共有することで、営業部門は顧客満足度や現在の利用実態をもとに精度の高い提案活動やアップセル/クロスセルのタイミング把握が可能となります。また、マーケティング部門は実際の顧客の声や体験データを反映したキャンペーン企画や新機能訴求を練ることができ、顧客一人ひとりの状況に合わせたアプローチが部門間で途切れなく実現できます。結果として、企業全体で一貫した価値提供による顧客満足度向上とLTV最大化、体験価値の継続的な向上へと結び付けることができます。
効果的なデータ共有のための仕組みとツール
効果的なデータ共有を実現するためには、単にツールを導入するだけでなく、業務プロセス全体を見据えた仕組みづくりが不可欠です。ポイントとして、以下の点が挙げられます。
まず、CRMやSFA、MAなどの各種ツールを部門横断で統合することで、情報が分散せずに一元化され、リアルタイムかつシームレスなデータ連携が可能になります。特に、HubSpotやSalesforceといったプラットフォームは、マーケティングから営業、カスタマーサクセスまでの各部門が必要とする情報を統合管理できるため、全社的な意思決定や顧客対応のスピードアップに直結します。
さらに、データの標準化――つまり入力規則や項目フォーマットを統一することも極めて重要です。例えば、担当者が入力する項目や商談記録、契約関連データについて、部門ごとに異なる運用をしていると情報の不整合や抜け漏れ、検索性の低下といった課題が発生します。全社共通のルールを設け、正確かつ再現性のあるデータ蓄積を推進することで、分析やレポーティングの信頼性も向上します。
また、情報セキュリティと業務効率を両立させるためには、役割に応じたアクセス権限の管理も必要不可欠です。部門や職責ごとにデータへのアクセス範囲や編集権限を厳格に設定することで、情報漏洩リスクの低減と効率的な業務運用を同時に実現できます。特にISO/IEC 27001認証などのセキュリティ要件を満たす運用体制は、現代のBtoBビジネスにおいて信頼確保の観点からも重要視されています。
加えて、データはシステム上で共有するだけでなく、定期的な部門横断のミーティングやレビューを実施し、現場の知見や最新動向も含めて情報共有を行うことが肝要です。各部門が実際の顧客事例や商談進捗を持ち寄ることで、潜在的な課題や新たな施策アイデアを迅速に抽出・改善できる体制が整います。
近年は、Slackなどのチャット・コラボレーションツールを活用し、リアルタイムで双方向のコミュニケーションが行える環境構築も推奨されます。これらのツールとCRM等の連携運用により、単なる情報伝達にとどまらず、業務上の意思決定や問題解決のスピードも大幅に向上します。
このように、ツールと運用ルールの両輪によって、部門間の壁を越えたスムーズかつセキュアなデータ共有を実現することが、顧客満足度や事業成果の最大化につながります。
HubOneだからこそ成功に近づける理由
営業・マーケ・CSのデータ共有体制を整えることは、単なる理想論ではなく、現実的な「仕組み」と日々の「運用」の両輪が確実に機能することが不可欠です。特に重要なのは、ツールを導入した“その先”──現場の業務に定着し、真に成果につながる“活用設計”の構築です。
HubOneは、HubSpotをはじめとしたSaaSの選定・導入支援にとどまらず、それぞれの現場に寄り添った具体的な業務プロセス設計・運用定着支援に強みを持っています。マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門がどのデータを、誰が、どのタイミングで、どのように活用するのかを明確化し、役割ごとの業務フローに沿ったデータ活用の“痒い所に手が届く”運用設計を提案します。これにより、データ活用が単発の施策で終わらず、習慣・文化として根付く仕組み作りをリードします。
また、100件を超える豊富な支援実績の中から得られたベストプラクティスや業界特有の知見を活かしつつ、企業固有の業務プロセスや組織体制、文化にフィットする柔軟なカスタマイズを実現。初期設計から現場浸透、定着化、運用改善までを一気通貫で伴走します。
こうした総合的なアプローチがあるからこそ、ツール導入だけでは到達できない部門横断のシームレスな連携や、顧客体験の最適化をハブワンなら確実に実現できるのです。
データ共有が顧客体験を変える
営業・マーケ・CSの3部門が適切なデータ項目を共有することで、顧客とのあらゆる接点において一貫性とパーソナライズが生まれ、LTV(顧客生涯価値)の最大化につながります。たとえば、営業部門が把握する契約交渉の経緯や重要な意思決定ポイント、マーケティング部門が持つ行動データやキャンペーン履歴、CS部門が収集したサポート履歴や顧客満足度スコアなど、各部門が保持する情報を横断的に統合・共有することが、組織全体での顧客理解の深化と緻密な対応の実現を支える「共通言語」となります。これにより、部門をまたいで顧客それぞれの状況に応じた適切なタイミングでのコミュニケーションや提案が可能となり、個々の顧客体験を最適化できます。
もちろん、部門ごとの専門視点や施策も重要ですが、それを全社レベルで連携させるためには、正確でアクセスしやすいデータ基盤の整備と、リアルタイムな情報共有が不可欠です。こうした仕組みは、もはや企業成長に不可欠な経営基盤といえるでしょう。
顧客満足度の向上、営業効率の改善、マーケティングROIの最適化――これらの実現を支えるのが、「正しく整ったデータの共有体制」です。今こそ、自社の情報共有プロセスやデータガバナンスの在り方を見直し、全社での連携強化や運用改善の取り組みに着手する絶好のタイミングではないでしょうか。データドリブンな組織づくりは、持続的な成長と競争力強化の鍵を握っています。